記事内容
企業が持続可能な経営を目指して、DX(Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション)の推進を志向することが重要視されるようになりました。そして、DX推進の一環である「業務のデジタル化」を実現する手段として「クラウドサービスの利用」を原則とする考え方が主流になっています。
政府による「クラウド・バイ・デフォルト原則」の推進
日本においてもデジタル庁が発足し、社会全体のデジタル化が推進されようとしています。デジタル庁では、政府共通のクラウドサービスの利用環境として「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」を政策の一つとして掲げています。政府情報システムや行政サービスですらクラウド化される流れにあります。
また政府は「政府情報システムにおけるクラウド サービスの利用に係る基本方針」を取りまとめており、この資料において「クラウド・バイ・デフォルト原則」として、「クラウドサービスの利用を第一候補として、その検討を行うものとする」と明記しています。
なお、この資料はクラウド化の指南書としても分かり易くて役に立つと思いますので、目を通されることをお薦めします。
「政府情報システムにおけるクラウド サービスの利用に係る基本方針」
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/cloud_policy_20210330.pdf
(2022/5/20 引用)
クラウドサービスの利用メリット
この資料においては、(情報システムの整備に際しての)クラウドサービスの利用メリットを5項目にまとめています。
- 効率性の向上
- セキュリティ水準の向上
- 技術革新対応力の向上
- 柔軟性の向上
- 可用性の向上
つまりはクラウドサービスの利用により、これらのメリットを最大限に活用することで迅速、柔軟、且つセキュアでコスト効率の高いシステムが構築可能になるとしています。それゆえに「クラウドサービスの利用を基本方針とする」と示されています。
とは言え「クラウドサービスの利用が第一候補」と言われても、これまでクローズドな自社システムを運用されていれば、クラウドサービスへの移行に対してインターネットへの接続を危険に感じられる場合もあるかもしれません。
もしそうであれば、先の引用資料に掲載されたコラム「クラウドサービスが危険だろうと思い込んではいけない」(資料上の5ページ)をご覧になってみてください。
印象や思い込みで判断するのではなく、正しい情報を収集し、比較検討を行い、バランスを踏まえ、事実に基づいた判断を行うべきであることを提言しています。
クラウドに関する分類(モデル)
単に「クラウドサービス」と言った場合、人や状況によって連想するサービスが異なるかもしれません。例えば以下のように。
- IT企業等が利用する仮想サーバのようなクラウドサービス
- 個人が利用するGmailやGoogleドライブのようなクラウドサービス
クラウドには様々な形態があります。クラウド・コンピューティングの定義や分類について、体系的に整理された教材として以下があります。「総務省 ICTスキル総合習得教材」[1]の一部になります。当資料の図を説明に引用します。
「2-2:クラウドのサービスモデル・実装モデル」
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12366610/www.soumu.go.jp/ict_skill/pdf/ict_skill_2_2.pdf
(2023/2/19 引用)
クラウドを分類する観点として、NIST(米国国立標準技術研究所)では、サービスモデル(Service model)と実装モデル(Deployment model)を示しました。
【 サービスモデル 】
クラウドサービスの構築・カスタマイズに関する役割分担による分類です。
また、コンピュータの階層を3層で考えた場合、1段目のみクラウド事業者に任せるのがIaaS、2段目まで任せるのがPaaS、3段目を含めて全て任せるのがSaaSです。
【 実装モデル 】
クラウドサービスの利用機会の開かれ方による分類です。
クラウドサービスの利用検討プロセス
先に引用した「政府情報システムにおけるクラウド サービスの利用に係る基本方針」では、「クラウド・バイ・デフォルト原則」に基づく利用検討プロセスとして、次のように具体方針を示しています。
まずはSaaSの利用検討から開始することを示しています。SaaSではクラウド事業者から提供されるアプリケーションの利用に注力すれば良いので、利用者としては手軽に始め易いでしょう。
そして、SaaSの利用が著しく困難であったり利用メリットがない場合は、IaaS/PaaSの利用検討に進む流れになります。それぞれパブリック・クラウドから検討することを示しています。
パブリック・クラウドについて、世界的に有力なプラットフォーマー(企業)である、Amazon、Google、Microsoftが提供するクラウドサービスを具体例として挙げてみましょう。よく3大クラウドプラットフォームとして紹介されています。
- AWS(エーダブリューエス/Amazon Web Service)Amazonが提供
- GCP(ジーシーピー/Google Cloud Platform)Googleが提供
- Azure(アジュール)Microsoftが提供
(注)「Google Cloud Platform」は、2022年6月に「Google Cloud」に名称変更されています。
なお余談ですが、冒頭で紹介した「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」では、これらのクラウドサービスが採用[2]されています。
話を戻して、SaaSの利用検討を第一歩とする観点においては、もう少し視野を広げた方が(利用検討対象が)分かり易くなると思います。SaaSに関しては、GCPとAzureではクラウドグループウェアとの連携の形になります。大まかに分類してみます。
SaaSとして挙げたクラウドグループウェアについて補足します。
- Google Workspaceは、GmailやGoogleドライブ等を内包したクラウドサービス
- Microsoft 365は、ExcelやWord等を内包したクラウドサービス
開発者ではない一般の利用者にとっては、これらで利用できるサービスをご覧になると、一気に身近な存在に感じられるのではないでしょうか。
バックオフィス業務へのクラウドサービス利用
現在では、目的別に様々なクラウドサービスが、様々な企業から提供されています。クラウドサービスの検討や評価をするにしても、ある程度の利用経験がないと難しくなっているかもしれません。
クラウドサービスの利用経験が乏しいとお考えの場合は、まずはバックオフィス業務に対してパブリック・クラウドサービスを利用してみることを検討されては如何でしょうか。
企業活動においては「生産機能」「販売機能」「事務・会計機能」が必要不可欠とされます。バックオフィス業務は「事務・会計機能」に該当します。一般事務を始め、経理、財務、人事、総務、等の職種があります。
バックオフィス業務のデジタル化に対しては、クラウドサービスが利用し易いだけでなく、大きな効果が得られ易いとされています。
クラウドサービスであれば、特に必要に迫られている部分であったり、手が出し易い部分から徐々に取り組むことが可能です。こうした点からもクラウドサービスの利用メリットを実感できますね。
『ICTイノベート』では、Google WorkspaceやMicrosoft 365に代表される身近なパブリック・クラウドサービスの業務活用について、継続的に取り組んで行く考えです。具体的な情報発信も随時行って参ります。
この記事のまとめ
- 業務デジタル化にクラウドサービスの利用を原則とする考え方が主流になっている
- クラウドサービスの分類による特長の違いを意識して利用検討を行うことが必要
- 身近なクラウドグループウェアの業務活用は始め易くて発展も期待できる