記事内容
前回のコラム記事ではIoTの実例として、センサーで収集したデータをクラウドサービスを活用して可視化しました。この例では収集したデータを「見る」までに留まっていましたが、今回はデータを「活用」する実例をご紹介します。まず、どのようなデモを構築したのかを整理します。
前々回のコラム記事でご紹介した「安価なIoTトライアル構成の例」の図をイメージして、工場における製造作業の作業状況を可視化します。
製造作業の現場で収集されたセンサーデータの値変動によって作業の変化を判別します。具体的には、作業の開始と終了を自動判別して作業実績の把握に役立てます。
仕組みとしては、前回のコラム記事でご紹介したクラウドサービスを活用したIoT構成を基にしていますが、所有物の範囲内で追加しており、他に2種類のセンサーとスマートフォンを活用します。
なお、今回は機器や仕組みについては余り踏み込まず「業務の中で活用されるIoT」に焦点を当てます。
それでは、デモについて具体的な説明に移ります。デモの全体的な流れを下図でご説明します。
≪作業イメージ≫として具体的な製造作業を想定して表しています。工程を流れる指示書に従って作業を行います。これに対するIoT活用として、センサーによって作業の開始と終了を自動判別します。
≪デモ操作≫では、当デモにおいて工程作業に対してどのようにセンサーを活用しているのかを表しています。
但し検査工程だけは異なっており、センサーによる自動判別ではありません。クラウドサービスを活用した実績管理の為のIT利活用事例として組み込んでみました。
また、各工程の作業開始前に「作業報告」として作業指示と紐づける操作を行います。
図だけでは説明が不十分ですので、もう少し詳しい情報を表に整理します。
こうした要件によって収集したデータを用いて、工程毎の作業状況を管理します。クラウドサービスを活用し、作業状況をリアルタイムに表示(モニタリング)する画面にWebブラウザからアクセスします。
当画面では各工程において、どの作業指示を作業中なのか、またはどの作業指示が完了しているのか(現在は作業無しの状態)が分かります。作業に伴う画面表示の変化について補足します。
- 「作業報告」入力時、[状態]は「未着手」(検査工程では「着手」)
- 「作業開始」判別時、[状態]は「着手」(開始時刻更新)
- 「作業終了」判別時、[状態]は「完了」(終了時刻更新)
このように、工場における製造作業の作業状況を可視化しました。とは言え、実際の製造作業はとても複雑であり、このような単純なモデルでは片付きません。
それでも、無意味や無理と決めつけないで、できる部分から着手して段階的に実現して行くことに意義があると考えます。「やってみる」ことで次の課題や展望が見えてくるものです。
今回のデモを例に取ると、スマートフォンで複数のQRコードを読込む操作をしてみましたが、操作の煩わしさの面で実用的にはタブレット端末+バーコードリーダーの構成が望ましいと感じました。更にはタブレット端末を導入するのであれば、紙の指示書情報を入力するのではなく、端末上で指示情報を確認すると言った、ペーパーレスな作業フローの構築へと発想が拡がって行きます。
ちょっと話が脱線しつつあるので元に戻します。
今回は「業務の中で活用されるIoT」として、センサーを活用して作業状況を可視化するデモをご紹介しました。このような実例をご覧頂くことにより、IoTを身近に感じて頂きたいと思います。そして自社の環境を想定して、IoTについて具体的に考えてみる切っ掛けにして頂けたら幸いです。
この記事のまとめ
- センサーデータの可視化から活用へとステップアップした
- 工場における製造作業の作業状況を可視化するデモを構築した
- 「やってみる」ことから気付けることがある
- 実例を通してIoTを身近に感じ、具体的に考えてみる機会にして欲しい